相続分
1 相続分の意義と種類
相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属し、各相続人は、その相続分に応 じて被相続人の権利義務を承継する(民法898⦅共同相続の効力⦆、899)。 また、相続財産は、相続人間の遺産分割協議等によって分割されることとなる。 したがって、共同相続人は、分割されるまでは、その共有に属する相続財産に対してそ れぞれの相続分に応じた持分を有していることになる。 この相続分は、民法の規定によって定められており(民法900⦅法定相続分⦆)、これを 法定相続分という。 また、被相続人は、遺言で共同相続人の相続分を自由に定めることができ(民法902⦅ 遺言による相続分の指定⦆)、これを指定相続分という。相続分の指定がある場合には、遺留分の規定に違反しない限り、その指定が優先される。
なお、民法では、これらの他、特別受益がある場合と寄与分がある場合の調整につ いて、規定が設けられている。
2 法定相続分
「法定相続分」は、被相続人が遺言で相続分を指定していない場合に、遺産分配の基準 となるものであり、「相続分」とは、共同相続人の相続すべき割合、つまり相続分率を意 味する。 「法定相続分」は、共同相続する相続人の身分によって異なり、次のとおりとなる(民 法900⦅法定相続分⦆)。
① 子と配偶者
子 2分の1 配偶者 2分の1
子が数人あるときは、子の法定相続分 を均分する。
②直系直系尊属と配偶者
直系尊属3分の1 配偶者 3分の2
同じ親等の直系尊属が数人あるとき は、直系尊属の法定相続分を均分する。
③兄弟姉妹と配偶者
兄弟姉妹4分の1 配偶者 4分の3
兄弟姉妹が数人あるときは、兄弟姉妹 の法定相続分を均分する。 ただし、父母の一方を同じくする兄弟 姉妹(半血兄弟姉妹)の相続分は、父母の 双方を同じくする兄弟姉妹(全血兄弟姉 妹)の相続分の2分の1とする。
(注)非嫡出子の相続分については、嫡出子の2分の1とされていたが、平成25年9月4日付の最高裁 判所の決定によって違憲と判断され、平成25年12月11日、嫡出子と同じ相続分となるよう民法が改正された。改正後の民法は、平成25年9月5日以後に開始した相続について適用することとされた。
3 代襲相続分
代襲相続人の相続分は、相続人となるべきであった者(被代襲者)の相続分をそのまま 受け継ぐ。同一の被代襲者について複数の代襲相続人がいる場合には、それぞれの相続分 は被代襲者の相続分を均分する(民法901⦅代襲相続人の相続分⦆)。
4 指定相続分
相続人が複数いる場合、被相続人は遺言で相続人の一部又は全部について、相続分を指定することができる(民法902⦅遺言による相続分の指定⦆①)。
5 身分が重複する場合の相続分
⑴ 双方の相続分を取得する場合
被相続人の孫が子(孫からみると親)の代襲相続人であり、かつ、養子となっている場合は、被相続人の子である。 このようなときには、孫は代襲相続人としての相続分と子としての相続分の双方の相続分を取得することとしている(昭26.9.18民甲1881号回答)。
(注) 相続税法上の法定相続人の数の計算においては、この孫は「実子1人」として計 算される(相基通15-4)。
⑵ 一方のみの相続分を取得する場合
配偶者は、被相続人の兄弟姉妹としての身分も持ち合わせていても、配偶者としての相続分のみを取得し、兄弟姉妹としての相続分は取得しないとしている(昭23.8.9民甲2371号回答)。
6 特別受益者の相続分
共同相続人の中に、被相続人から遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しく は生計の資本として贈与を受けた者(特別受益者)があるときは、これらの遺贈、贈与を 考慮して相続分を修正する(民法903⦅特別受益者の相続分⦆)。
遺贈や生前贈与による特別受益があった場合には、「被相続人が相続開始の時において 有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなす」ものであり、このように贈与分を相続財産に計算上戻すことを「持戻し」という。
7 寄与分がある者の相続分
共同相続人中に、被相続人の財産の維持又は増加につき特別の寄与をした者があるときは、その者の寄与分を考慮して相続分を修正する(民法904の2⦅寄与分⦆)。 この特別の寄与とは、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人 の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加に係る特別の寄与をいう。 なお、寄与分は、原則として共同相続人の協議によって定める。