相続登記の義務化【令和6年4月1日から適用開始】
現在、相続による登記は任意となっており、名義変更をしていない土地が多くなり問題が発生しております。
例えば、ニュースで取り上げているものとすると【空き家問題】があります。これは、本来の所有者がお亡くなりなったことにより、誰も住まなくなったり、利用もしないという状態です。この状態が長く続くと倒壊の恐れや、犯罪の温床となることもあります(実際に空き家を見つけて大麻栽培工場にするなんてこともありました)。
相続登記が適切にされていれば、市役所や警察等から現在の所有者へ不動産の管理・保存等を要請し対処することが可能なわけです。しかし、登記が任意ということや専門性が高いことで名義変更を後回しにして放置されているのが現状です。また、弊所の相続担当者の中には、名義変更を放置していたため第2次、第3次、第4次の相続が発生して、当初は3人で話し合えば良かったものが、調べたら登記をするまでにお亡くなりなられている関係者を含めると総勢250名分の戸籍を取寄せ、遺産分割協議に参加しないといけない相続人が80名を超えるということもありました。このような背景から相続登記が義務となった訳です。
1 具体的な改正内容
新しく改正された不動産登記法においては、不動産の相続人に対し「相続が開始して所有権を取得したことを知ってから3年以内に相続登記をしなければならない」と定められました。
つまり、以下の両方の事実を知った時点から3年以内に相続登記をしなければなりません。
・不動産の所有者が死亡した事実
・相続人である自分が不動産を相続して所有者となった
したがって、不動産の所有者が亡くなった場合に、亡くなったことを知らなかったり、亡くなったことは知っていても、その方が不動産を所有していることを知らない場合には、相続登記の義務は発生しませんが、両方の事実を知っている場合には、相続登記の義務が発生します。
2 遺産分割協議ができていない時はどうするべきか
改正不動産登記法では、新たに「相続人申告登記」という制度も加わりました。これは、不動産を相続した人が法務局に対し「私が不動産の相続人です」と申し出て登記してもらう制度です。
基本的には、不動産の所有者となったことを知ってから基本的に3年以内に相続登記しなければなりませんが、遺産分割協議が整っていないなどの事情により、相続登記をするのが難しいケースも多いのが現実です。
そこで、遺産分割協議が整うより先に「自分が相続人です」と法務局に申請することにより、相続登記義務を一旦履行したことにしてもらえるのが、相続人申告登記制度です。
相続人申告登記の申請があると、登記官はその不動産の登記に申出人の氏名や住所などの情報を付記しますが、この時点では正式な相続登記が完了した訳ではありません。
その後、遺産分割協議などを行って相続人が確定したら、その日から3年以内に正式な相続登記をすれば相続人は義務を完全に履行したことになります。
3 相続登記も相続人申告登記もしなかったら
相続登記が義務化された後(=改正法の施行日である令和6年4月1日以降)に、期限内に相続登記を完了しない場合、ペナルティが発生しますので必ずどちらかの申請をしてください。
具体的には「10万円以下の過料」が課される可能性があります。過料とは、お金を取り立てられる金銭的な行政罰です。
過料は罰金や科料とは異なり犯罪ではないので、前科はつきません。ただお金をとられるだけでも十分なペナルティとなるでしょう。改正法施行後は早めに相続登記すべきといえます。